この記事では、中学生の優秀作品を参考にして、読書感想文のレベル向上に役立つ「作文のコツ」を提供します。構成テクニックや表現テクニックについて取り上げながら、中学生が読書感想文をはじめとしたすべての作文に活かせるよう、実際に作文する時の手順どおりに解説を進めます。
この記事の目次
記事の紹介
- 読書感想文のコツ:作文は「最初に『自分の主張』を決める」
- 書き出しを決める:最初の1行で読者を掴む
- 構造化しよう:パーツの組み合わせ方
- 表現力と語彙
なお、今回取り上げる優秀作品は、
第68回青少年読書感想文全国コンクール 文部科学大臣賞<中学校の部>受賞作品 です。
全文はコチラからご覧ください。当サイトでは、著作権に配慮し、全文の掲載を控えます。
受賞者が読んだ本は、
「夜と霧」(みすず書房)ヴィクトール・E・フランクル・著 池田香代子・訳 です。
読書感想文のコツ:作文は「最初に『自分の主張』を決める」
読書感想文のコツは、最初に「何を書くか」を決めることです。つまり、「結論」を決めるのです。文章を書くのが上手な人は、ほとんどが最初に「何を書くか」、つまり結論に書く「自分の主張」を決めてから書きはじめます。中学生のみなさんが、高校生になって「小論文」を書くときも、大学生になって「卒論」を書くときも、「何を書くか」結論を決めてから書き始めることです。
「徒然なるままに書いていたら、書き上がった」ではないのです。
受賞者の「自分の主張」は、端的に言えば「辛くても頑張る」です。受賞作品は豊富な語彙と知性に溢れた文章ですが、中学生が読後に得た率直な感想は「私も辛いけど、頑張る」というものであったと推察します。
大切なことは、「素朴な感想で良い」ということです。
なお、受賞者は、この「自分の主張」を、作品中では次のように表現しています。作品の文章のうち最後の箇所です。
私は胸を張って、苦悩に向き合い続けたい。
第68回青少年読書感想文全国コンクール 文部科学大臣賞<中学校の部>受賞作品
《徒然なるままに・・読書のお誘い》
こども「徒然草」
齋藤孝 著
出版 筑摩書房
ISBN 448087898X
書き出しを決める:最初の1行で読者を掴む
結論である「自分の主張」が決まれば、次は「最初の1行をどう書くか」です。「書き出し」は、読者に興味を持たせるために重要な要素です。工夫したい部分であります。
受賞作品は、次のような書き出しです。
中三の夏は、苦しい。進路に悩み悶え、苦手な数学の難問に脳を抉られる。
第68回青少年読書感想文全国コンクール 文部科学大臣賞<中学校の部>受賞作品
格調高い文体でありながら、生身の人間の苦悩を感じさせます。 ——思春期の生徒の身悶えするほどの、理想と現実の狭間に疲弊する向上心—— 狙いは成功したと言えるでしょう。
ところで、最初に何を書くか悩むという方の中には、「書き出し」と「結論」の「関連性」に悩むという例もあると思います。受賞作品は、「『苦しい』⇨『辛くても頑張る』」なので、ストレートに関連しています。しかし、書き出しと結論の関連性については、さほど気にせずとも構いません。この後の書き方で、いかようにもなります(次章で解説します)。結論を決めてから考える「書き出し」ですから、あまりに的外れとなることはないはずです。
構造化しよう:パーツの組み合わせ方
「最初の1行」と「結論」が決まれば、その間を考えることになります。つまり、文章の構成を考えるということです。私は、これを「柱立て」と呼んでいます。
やり方の一例を紹介します。
- 思ったこと、考えたこと、本に書いてあったこと、印象に残ったこと・・・これらを「キーワード」「キーセンテンス」として書き出します。これらは、「柱」のテーマとなりうるものたちです。
- 「書き出し+序論」「本論1」「本論2」「結論」という塊で考えたとき、「キーワード」「キーセンテンス」の中で使えるものを、「序論」「本論1」「本論2」のどこに配置すればよいか。すなわち、各論をどのようなテーマで書くか。こらが「柱立て」です。
- このように構造化できれば、あとは文章化します。
受賞作品の文章構造を解析すると、下図のように表せます。起承転結型です。
書き出し+序論
- 書き出し(苦しい)
- 挫折の思い出(三度目)
- 本の紹介
本論1(承)
- 「どんなに悲惨な・・(引用)」
- 向き合い方次第
- 未来への希望の存続
- 曽祖父・シベリア抑留
- 生きることに意味
本論2(転)
- 私の努力
- 自己実現
- 私の幸せ
- 誰かを幸せにするために尽力する生き方
- 悩む自分の心を信頼
結論
- 妥協よりも挑戦
- 結論(私は胸を張って、苦悩に向き合い続けたい)
表現力と語彙
「柱立て」して構造化できたら、文章化。ここで、差がつくのが、表現力、語彙の多寡。
入賞作品は、複雑な感情を抑揚の効いた表現で描写し、具体的なエピソードを用いて論の展開に説得力を持たせています。また、豊富な語彙を以って、知性豊かな思春期の生徒の苦悩と決意を描き切っています。
もちろん、表現力や語彙といったものは一朝一夕に身につくものではありません。日頃から鍛錬いたしましょう。
しかし、ここで、平易な文でイキイキとした文章を書く方法をご紹介しましょう。「手紙を書くように、話しかけるように書く」という方法です。そう、みなさんもご存知の『あしながおじさん』です。ぜひ参考にしてみてください。
あしながおじさん
ジーン ウェブスター 著・岩本正恵 訳
出版 新潮社
ISBN 4102082034